大人の風疹ワクチン接種が始まります(風疹五期)
2019.06.09
風疹第五期接種が開始になります
5月に入ってから、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日の間に生まれた男性のいらっしゃる世帯に風疹の抗体検査と予防接種のご案内が、市区町村の封筒で順次届いていることと思います。
大人がかかる風疹
この年になって予防接種?と驚かれた方も多いかもしれません。
風疹は子供のかかる感染症と考えられがちですが、平成30年の段階で患者さんの中心は30代から50代の男性となっており、大人のかかる病気になっています。
これは風疹の予防接種が以前、中学生の女子のみに接種されていたなごりで、その時代に子供時代をすごした男性は、過去に風疹にかかったことのある人を除くと免疫がついていないため、容易に感染、発病してしまうことによります。
風疹は妊婦さんが感染するとお子さんに重い先天異常が生じる可能性があり、子供の頃に予防接種を済ましていてもその効果が薄れてきている女性は風疹に感染する可能性が非常に高く、妊婦さんのご家庭で不幸にして風疹が発生した場合、おなかの赤ちゃんに重大な障害が起きる危険性があります。
まだ未婚の男性であっても、風疹に感染して意図せず周囲にうつして回ることになれば、そのつもりはなくても、どこかの誰かの赤ちゃんに重い障害を起こす悲劇の片棒をかつがされる可能性があります。風疹の怖いところは、典型的な発熱や発疹が出ない患者さんがかなりいることで、ただの風邪だと思って会社に行くことで他の人にうつしてしまう危険性があります。
働き盛りの男性がかかりやすいため、風疹の流行している海外出張先で感染し日本国内に持ち込むケースも最近目立っており、その診断も容易でないことから、該当する方は積極的に予防接種を受け、かからないように予防する必要性があります。
大人を対象とした風疹抗体価測定とワクチン接種が開始
厚生労働省は期限付きではありますが、2022年3月31日までの三年間に限り、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日の間に生まれた男性に指定医療機関で全額公費により風疹の抗体検査を行い、風疹抗体価が一定以上低い方については同じく全額公費によってワクチンを接種することになりました。
抗体価測定ならびに予防接種については冒頭でふれました案内の封筒の中にあるクーポン券が必要となります。抗体検査をお受けになるときにはご本人確認とカルテ作成のため保険証などを一緒にお持ちください。また、定期検診や特定健診のときにも抗体検査が受けられますので、ご希望される方はクーポン券を必ずご持参ください。
予防接種を全額公費負担で受けられる方は風疹抗体価がHI法で8倍以下の方です。
しかし、実際に風疹の感染予防に必要な抗体価はHI法による検査で32倍以上とされており、その間の検査値の男性や、予防接種歴があっても予防接種の効果が薄れている方などが風疹に感染する危険性は依然として残ります。
市区町村でのとりくみ
そこで、市区町村では国とは別の公費補助制度によって検査結果が32倍と8倍の間の男性や、女性もカバーすることになっています。
足立区では検査日現在、足立区に住民登録のある19歳以上の方(男女問いません)は無料で風疹の抗体検査を受けられます(前段で触れた国の制度の対象の方はそちらをご利用ください)。当院では検査も予防接種も実施可能です。
検査をご希望する方は足立区へ風疹抗体検査の受診票の交付申請をしてください。手続きの詳細は下のリンク先を参照してください
【19歳以上の方へ】足立区では風しんの抗体検査・予防接種の費用助成を行っています抗体検査で32倍未満であった場合、自己負担5000円で麻疹風疹混合ワクチンを打つことができます。国の制度の検査で8倍よりも高い値で32倍に届かなかった方も対象となります。なお、風疹のみの単独ワクチンは昨年より販売が終了しており、現在は接種できるのは麻疹風疹混合ワクチンのみとなります。
今打てるワクチンは麻疹風疹混合ワクチンのみ
なぜ麻疹風疹混合ワクチンを打つのでしょうか。一つは製造するワクチンの種類を絞ることでよりたくさん作ることができ、安定して供給できるという理由によりますが、それとともに麻疹もまた予防するべき重要な感染症であることもその理由です。
麻疹は空気感染で伝播し、その感染力の強さは伝染病の中でもトップクラスです。患者さんと同じ部屋にいるだけで感染する恐れがあります。免疫を持たない場合の発症率は90%と高く、高い熱と発疹が出て苦しめられるばかりか、感染した人の免疫系に悪影響をあたえ、その免疫力を大きく下げるため、麻疹から回復した後に感染症にかかると重症化しやすくなるという特徴があります。江戸時代には麻疹は命定めと言われ、乳幼児死亡の大きな原因となっていました。現代においても1000人に1人が死亡するといわれており、非常に危険な感染症です。
日本国内ではワクチンの徹底により麻疹の新規発生はかなり減っていますが、海外からの観光客や、海外の旅行先で感染した帰国者などを起点とするアウトブレイクが頻々と起きています。
こうした海外からの麻疹の持ち込みに対して、社会全体で麻疹に対する免疫抵抗力をしっかりつけることが、求められています。麻疹への免疫力も高めることは風疹に劣らず重要です。麻疹のワクチンが混ざっていても効果にはかわりはないとされていますので、この機会に麻疹への抵抗力も高めましょう。
国立感染症研究所風疹Q&A妊娠を控える女性の方の注意点
最後に、風疹の予防接種には妊娠可能な女性の場合に他の予防接種にはない注意点があります。それはワクチンが生ワクチンという弱毒化した生きたウイルスをからだに入れるため、お腹の中の赤ちゃんへの影響が懸念されるためです。ですから妊娠している場合には接種不可です。また、接種後は二ヶ月程度の避妊期間が必要です。ご注意ください。